水系を見ると、前述のように、雄大なV字谷と著しい屈曲を示す蛇行河川が注目される。
特に十津川支流の神納川のV字谷は、紀伊山地の中でも発達が著しいもので両側の稜線間の距離は10キロメートル、深さは500メートル以上、神納川と十津川本流との合流点である川津から分水嶺までの標高差は1000メートル以上に及ぶが蛇行はさほどではない。これは隆起が今も進行中であることが小さな屈曲を打ち消したものと考えられている[146]。
十津川の支流のなかでも湯川や川原樋川、また、湯川の支流である西川は半径100メートルから500メートルの小さな屈曲を頻繁に繰り返している。十津川本流でも蛇行は見られるものの湯川や西川ほどの急な屈曲の蛇行は見られず、注目に値する。こうした屈曲にΩ字状に囲まれた土地は環流丘陵を構成するが、水害防止の観点から水路を短絡させる工事が行われている箇所もある[147]。このような河川蛇行は、隆起準平原上にあった河川流路の名残と考えられる[148]。この種の隆起準平原の名残と見られる地形が、小辺路周辺には多く見られる[143]。
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水系に産する生物、特に魚類については、源伴存の『和州吉野郡群山記』(弘化年間)がイワナ(地方名キリクチ)、アユ、アマゴ(ヤマメ)、ウナギの5種を記載して[149]以来、十津川とその支流に見られる淡水魚について、多くの調査研究が行われてきた[150]。イワナは冷涼な水系を好む種であり、十津川水系上流部は南限にあたると考えられる[151]。小辺路が横切る川原樋川の最上流部渓流は民俗名をキリクチ谷といい[152]、この渓流に棲息するキリクチは1962年(昭和37年)に奈良県天然記念物に指定された